今月は,寒い日が続いていますが,“てぶくろ”をキーワードに紹介します。
1冊目は,ウクライナ民話『てぶくろ』です。
内容は,おじいさんが雪の森の中に、手袋を片方落としたところから始まります。
くいしんぼうねずみが手袋を見つけ,その中で暮らすことにしました。そこへ,ぴょんぴょんがえるや,はやあしうさぎ,おしゃれぎつね,きばもちいのしし達が次々とやってきて仲間に入り,手袋は今にもはじけそうになります。やがて落としたことに気づいたおじいさんが戻ってきて,連れていた犬が吠えたてると,驚いた手袋の中の住人たちは,森のあちこちへ逃げていきます。
仲間が加わるごとに,はしごがつき,ひさしが伸び,窓がつき,煙突からは煙も出て,手袋はまるで家のようになります。
動物たちの楽しそうな共同生活が想像できたり,民族衣装を着た動物たちが繰り返す会話も、リズミカルで楽しくなります。
2冊目は,新美南吉作 『てぶくろをかいに』です。
ある雪の日の朝。外で遊んできた子狐が帰ってくると「手が冷たい」と母さん狐に訴えます。見ると子狐の手は冷たい雪で牡丹色になっていました。冷え切った子狐の手を握り、温めながら、母さん狐は手袋を買ってやろうと思いつきます。
夜になると狐の親子は、人間の住む町へ向かいました。しかし、母さん狐は、町の灯を見た途端に足がすくんでしまいました。友達と一緒に町へ出かけたときに、人間に酷い目にあわされたことを思い出したからです。どうしても恐怖感が拭えない母さん狐は、子狐に自ら手袋を買いに行かせることにしました。母さん狐は、手袋を売っている帽子屋さんの目印を教え、そして子狐の片手を人間の手に化けさせ、人間の手だけを帽子屋さんの戸口に差し入れ、手袋を買うように伝えました。
町に着いた子狐は、帽子屋さんの戸を叩きました。母さん狐には、人間の手に化かした方の手だけを差し入れるように言われています。しかし、帽子屋さんが戸を開けた拍子に差し込んできた光が眩しくて「手袋をください」と狐のままの手を差し入れてしまいました。「狐が化かしに来たな」と思った帽子屋さんでしたが、子狐が持っていたお金が本物だと気づくと、黙って手袋を渡してくれました。
無事に手袋を買って帰ってきた子狐は、間違った手を出してしまったこと。それでも手袋を売ってくれたことを話し「人間って少しも怖くない」と母さん狐に言いました。母さん狐はあきれながら「人間は本当はいいものなのかしら」と呟くのでした。
2冊とも,寒い日が続く今の季節にぴったりの本です。ぜひ一度読んでみてください。